環境フォーラム2023を開催しました

環境フォーラム2023の開催について

全国の皆さまにご参加いただけるよう、オンライン形式を採用し、「動物福祉」「廃棄物処理問題」「サスティナブルツーリズム」など、幅広いテーマで、各テーマの専門である、大学の先生方を講師にお招きしてウェビナー動画を作成、配信させていただきました。会期中は多くの方にご参加いただき、ウェビナーをご視聴いただきました。ご参加ありがとうございました。

今後も、世界の持続可能な発展を支えるためさまざまな情報を発信してまいります。以下に、今回の開催概要を掲載いたします。

環境フォーラムの概要

『環境フォーラム2023』開催にあたり

公益財団法人 国際平和機構
理事長・博士(情報科学)吉成 昇

本日はお忙しいなか、『環境フォーラム2023』にご参加いただき、誠にありがとうございます。当財団は、今年、設立認可をいただいてから40年、公益財団法人に移行して10年の節目を迎えました。これまで、世界の持続的発展・国際平和活動に寄与するため、様々な民間交流事業を行なってまいりましたが、ここ数年は、COVID-19の影響により、海外はもちろん、国内でも積極的な人材の交流の難しい時期が続いておりました。また、1年以上にもわたり続いているロシアのウクライナへの侵攻は、深刻な人道的危機をもたらしているうえ、世界中に大きな影響を及ぼしています。この場をお借りして、このたびのウクライナ戦争により被害にあわれている方々、避難を余儀なくされ来日された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、このような状況の中、本年はできるだけ多くの皆さまにご参加いただけるよう、オンラインセミナーの形式を採用し、『環境フォーラム2023』を開催する運びとなりました。
4名の先生方にご登壇いただきますが、「環境エンリッチメント」、「廃棄物処理事業における情報科学技術の応用」、「観光MaaS(Mobility as a Service)」、「世界のごみ問題を解決する『福岡方式』」と、いま非常に注目を集めているテーマでご講演いただきます。事例なども交えた密度の濃い内容になっておりますので、ご興味のあるテーマ以外のセミナーにも触れていただくことで、持続可能な社会の実現に向けた、新たな気づきを得ていただくきっかけになるのではないかと考えております。
ご参加の皆さまおよび関係者の皆さまに心より感謝いたしますとともに、このフォーラムが、皆さまにとって有意義な場になり、今後の業務・学業・生活の中でお役立ていただけるものになりますよう祈念いたしまして、ご挨拶に代えさせていただきます。

ウェビナー紹介

Session 1

環境エンリッチメントを目指した人口知能による動物見守り

北海道大学 大学院情報科学研究院

教授 山本 雅人

環境エンリッチメントとは、動物園で飼育されている展示(飼育)動物などが幸福で快適な暮らしを実現するために、動物福祉の立場から空間や食事方法などの生活環境を考えるという概念であり、動物園では近年非常に重要視されている。
特に、常同行動といったストレスを感じた際に見られる,行ったり来たりを繰り返す行動がどの程度行われているかを把握し、環境エンリッチメントによる効果を推定することが行われているが、監視カメラの映像から常同行動などの異常を飼育員が記録するのは多大な時間と労力がかかる。我々は、人工知能(AI)技術を用いて、動物の検出、追跡を行い,常同行動の有無を判定する技術開発を行っている。この技術が環境エンリッチメントに与える影響について講演する。

Session 2

廃棄物処理事業における情報科学技術の応用に関する研究
~SfMを利用した産業廃棄物最終処分場の三次元形状復元と容量推定~

株式会社吉成総合研究所

所長 大柳 幸彦

産業廃棄物最終処分場は、廃棄物のうちリサイクルが困難なものや、有害な物質を埋め立てて管理するための施設であり、周辺環境に与える影響等を考慮して場所ごとに埋め立ての許容量が設定されている。したがって、日々の埋め立て容量や残余容量を算出することで廃棄物の搬入量が基準値を超えないように適切に管理する必要がある。また、埋め立て完了後に次の処分場となる場所の選定や整備には数年単位の多大な時間を要するため、日々の細かい埋め立て状況を記録することによって、その推移から埋め立て終了時期を予測したいというニーズが存在する。これらの問題を解決するため、これまでの一般的な廃棄物処分場では、現地測量や搬入される廃棄物重量に基づく計算方法によって埋め立て容量の算出および管理を行ってきた。しかし、両手法はどちらもそれぞれ運用コストや体積計算精度の面で課題が存在し、処分場のニーズを完全に満たすものにはなっていない。本研究では安価かつ容易に運用が可能であるUAVによるデータ収集と多視点画像から三次元形状復元を行う Structure from Motion(SfM) を組み合わせたアプローチによって埋め立て地の三次元サーフェスモデルを生成し、従来よりも高精度な埋め立て容量および残余容量の算出を行う。実験では形状復元および体積計算アプローチの精度を確認するため、実際の埋め立て地でデータの取得、地形モデルの生成を実施し、最終的な体積計算結果を現地測量に基づく体積計算結果と比較することで有効性の検証を行う。

Session 3

観光MaaS (Mobility as a Service) は持続可能な地域づくりの救世主となり得るか

札幌国際大学観光学部

教授 千葉 里美

2015年、国際連合が採択した持続可能な開発目標(SDGs)への意識が世界的に高まり、観光業界でも持続可能な観光の実現に向けた取り組みが進められた。こうした動きは、COVIT-19によるパンデミックを経験したアフターコロナの今、さらに注目され、SDGsや意義ある観光を移動に求める新しい時代となり、観光客を受け入れる観光地だけでなく観光産業にまで必要な視点となっている。
本フォーラムでは、「観光MaaSは持続可能な地域づくりの救世主となり得るか」をテーマに、昨今の世界におけるサステイナブルツーリズムの潮流と観光産業の取り組みを概観し、自動車依存による環境汚染、交通渋滞、地域住民や観光客の効果的な移動、地域産業の発展をMaaSで実現させた先進地フィンランドが実施する移動と観光情報を一元化した観光MaaSのサービスデザイン事例より、このサービスを日本の地域に落とし込むことでどのような持続可能な観光が可能かを考察してみたい。

Session 4

世界に広がる福岡方式
~適正な廃棄物埋立地の技術移転に向けて~

福岡大学

名誉教授 松藤 康司

1975年に福岡大学と福岡市が共同開発したごみ埋め立て技術「準好気性埋立構造」は『福岡方式』と呼ばれ、福岡市をはじめとした数多くの埋立場で採用され、1979年には旧厚生省(現環境省)により実質的な日本標準として認定されました。
『福岡方式』は、メタンガスの排出や廃棄物による浸出水の汚染を抑制する効果、埋立地の改善効果があり、また安価な材料で比較的簡便な技術で建設ができることから、持続可能な埋立方式として認知され、1991年にはマレーシアで海外第1号の「福岡方式」の埋立地が建設されました。以降、世界中で普及が進み、国内外の環境問題の解決に大きく貢献してきました。そして2011年には、国連CDM(クリーン開発メカニズム)理事会において『福岡方式』による既存埋立場の改善が、カーボンクレジットを認める新たな手法であると認定されました。
この間、福岡大学と福岡市は共同でアジア太平洋地域等からの研修生の受け入れや技術者の派遣など、人材育成や埋立地改善のための技術支援を積極的に行いました。現在でも、国連ハビタットや国際協力機構(JICA)によって海外への普及活動が続けられており、アジア太平洋地域から中南米・アフリカなどにも広がっています。
この、世界のゴミ問題を解決する『福岡方式』について、その技術移転に向けての取り組みについてご紹介します。

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